2013年4月28日日曜日

Miguel / Kaleidoscope Dream (2012)

本年度のグラミー賞でBest R&B Songを受賞した期待の新人 R&Bシンガー!!
昨年、秋に発売のKaleidoscope Dreamを紹介します。
 

1.Adorn
ベースが最高に太いミッド系の楽曲です。
ヴォーカルはたっぷり濡れていて、他の音との絶妙なバランスがタマラナイですね。
キーボードとシンセが味噌ですね。この質感こそがMiguelの最大の魅力だと思います。
楽曲の構成は非常に単調ですがそこもまたCool!!ですね。

2.Don't Look Back
最初のサビはポップスの要素も微妙に取り入れながら楽曲が進行していきます。
Aメロになるとソウル色が攻め寄ってきますね。
しかしこの一環されたヴォーカルプロダクションと質感、強烈の一言ですよね。
それぞれの音の空間処理が異なっていて不思議な空間を創り上げてます。
この曲は最後に仕掛けがあって、そこがまた面白いですね。

3.Use Me
この楽曲は、ジャンルを超越しつつありますね。
インディーロックが好きな人も違和感なく聴けると思いますよ。
サウンドカオス感がハンパなく、ヤバい印象だけが強く残る楽曲ですね。
中盤の歌い込むパートが凄く高揚感があっていいですね。

4.Do You...
この楽曲は、かなりSOUL寄りですね。冒頭の乾いたギターがそう感じさせてくれていますね。
ヴォーカルはどっぷり濡れてますね。濡れ具合が強烈ですね。
対照的なサウンドの間にシンセが入ってきて、そうしてる間にギターまで程良く空間が出来て、
そうしたらうちに爆音ベースが入り乱れる不思議な楽曲ですね。
非常に面白いセオリー無視のサウンドメイキングが驚きのオリジナリティー満載ですね。

5.Kaleidoscope Dream
重苦しくファンキーなベースにファルセットがカッコいい楽曲ですね。
サビが壮大に展開していきますね。サイケデリックですね。
またオーソドックスなリズムパターンに戻る時も夢から覚めるような感覚。
中毒製の高い楽曲ですね。

6.The Thrill
Miguel独特のメロディーも程良くあり、心地よい楽曲ですね。
サウンドはサビでのストリングスや終始リズムを刻んでいるギターが印象的。
リズムパターンも裏に外してくる感じがタマラナイですね。

7.How Many Drinks?
このキーボードの質感そこにMiguelのファルセットが最高冴える楽曲ですね。
ファンク感も感じる楽曲は、俺の大好物ですね。
ラップっぽいパートもあり、バリエーションに富んだ楽曲です。

8.Where's The Fun In Forever
こちらの楽曲はAlicia Keysが参加しています。楽曲も一緒に書いているみたいです。
表立って歌っている訳ではなくコーラス程度ですが最高ですね。彼女の歌声は凄いですね。
ベースラインやコーラスのメロディーなど要所でAlicia Keysらしさは感じる楽曲ですよね。

9.Arch & Point
こちらも前の曲と続くように始まります。冒頭のあえぎ声がなんともセクシーですね。
ゆったりと楽曲は展開しながらもギターが刻むリズムがロックっぽさも感じさせますね。

10.Pussy Is Mine
この曲も前と続くように、いやまた最高ですね。
このアルバムの中で一番ヴォーカルの空間が狭いですね。
ギターのワンフレーズとたっぷり濡れたキーボードが少々不思議な世界を聴かせてくれますね。

11.Candles In The Sun
このラストの楽曲は、キーボードのループが軸となり、そこに淡々としたベース、
リムショットとハイハット、そこに埋もれるようにMiguelのヴォーカル、
完全にバンド系の楽曲ですね。

それにしてもこのアルバムは奥が深いですね。現在の最も新しいR&B Musicですね。
今後、時代が経っても色あせない名盤として認知されそうですね。
色々な意味合いで、重要な名盤だと俺は感じています。

2013年4月10日水曜日

Tyga / Hotel California (2013)

前作、Careless World: Rise of the Last Kingの大ヒットから1年弱での3枚目のリリースです。
前作がかなり良いアルバムだっただけに今回も非常に期待値が高いですが、どうでしょうね?
客演は相変わらず豪華ですので聴き応えはありそうですね。
少し気がかりなのは、2Pacのラップが入った楽曲は権利上の問題で2Pacのパートは削除された模様でね。


1.500 Degrees Feat. Lil Wayne
1曲目からLil Wayneが参加した楽曲です。
クールなサウス特有のサウンドと緊張感でスタートします。
メロディーや、構成で聴かせる曲ではなく、
淡々とラップしていくスタイルで聴かせてくれています。

2.Dope Feat. Rick Ross
この楽曲にはRick Rossが参加しています。
こちらも極力メロディーは排除したコンシャスな楽曲ですね。
やはり一筋縄ではいかないアルバムですね・・・

3.Get Loose
こちらの楽曲も1,2曲目と同様の曲。
ここ最近ここまでシンプルなトラックの曲を聴いていなかったので逆に新鮮ですね。
ここでひとまず一つの流れは終了って感じです。

4.Diss Song
かすれたギターがなんとも言えない味を出してます。インドとか中近東の匂いも少しします。
後半にはスクラッチ等も入ってHipHop感が高まります。
これから先の展開に期待膨らむ楽曲です。

5.Hit'em Up Feat. Jadakiss
こちらが本来なら2Pacのラップが差し込まれる予定だった楽曲です。
シンプルなピアノの単音のループが耳に残るトラックです。冒頭の流れにここで戻るって感じです。
2Pacのラップが削除されたのが残念ですね。

6.Molly Feat. Cedric Gervais, Wiz Khalifa & Mally Mall
Wiz Khalifaが参加した楽曲。Wizに合わせたかのようなちょいと煙いトラックです。
スクリューや、リフレインなど仕掛けが盛り沢山で聴き応えありで楽しめる楽曲ですね。

7.Fuck for the Road Feat. Chris Brown
ここ最近のメロウな楽曲の中でも群を抜いて素晴らしい曲。
循環系のコードが非常に心地よく、ビーツもゆったりしていて本当に心地いいです。
そこにChris Brownのフックは鬼に金棒です。この1曲にやられたって人も多そうですね。

8.Show You Feat. Future
こちらもメロウな楽曲。さらにはFutureの独特な野太い歌声に癒されます。
オリエンタルな匂いのするトラックが更に良し!! うれしい収穫です。

9.It Never Rains Feat. Game
トークボックス炸裂のウェッサイソング!! この曲も破壊力あります!!!
これから暖かくなる季節のドライブにぴったりです。ここまで振り切った楽曲があるのもうれしいですね。乾いたトラックにGameのラップが最強に映えます!! 気持ち良くカッコいい楽曲です。

10.M.O.E. Feat. Wiz Khalifa
スクリューから通常再生へ・・・全体的にまったりしていて、最高です。
Wiz Khalifaとの相性抜群です。フック以外でなっているキーボードの支え方が好きです。

11.Hijack Feat. 2 Chainz
ここからサウスゾーンですかね。かなり強力な圧が掛かった楽曲。2 Chainzにお似合いです。

12.Get Rich
オーケストラヒット的なサウンドとサウスビーツとシンセベースとウワもののトラック。
基本シンプルなトラック構成です。

13.Enemies
4曲目と同様のトラックです。このアルバム2度3度聴いて行くと何か見えてくるかもしれない。
アルバムのコンセプトもちょいと異質ですし。とにかくこの曲は最高ですね。

14.Drive Fast, Live Young
エレキとピアノ、濡れた楽曲です。意外とTygaはメロウな楽曲との相性が良いようです。
終盤に来てこの曲、しっくりきます。

15.Palm Trees
本編ラストの楽曲。最後は気持ち良く仕上げてくれました。程よいBPMでベースラインが心地よく、
ウワものもふわふわしています。女性ヴォーカルのサンプリングもGOODです。

今回のアルバムは、中盤から後半にかけては非常に素晴らしい楽曲が揃ったアルバムです。
もちろんサウスが好きであれば序盤の展開に痺れると思いますが。

チェックした方が良いアルバムです。
前作と合わせてもう一回聴いてみたら、もっと良さが理解できると思いますよ。
 

2013年4月5日金曜日

Frank Ocean / channel ORANGE (2012)

今回は、俺の現在の一番の愛聴盤となっている、
Frank Oceanの公式デビューアルバムを紹介します。

2012年7月10日に発売された、channel ORANGEです。全米チャートでは2位まで上昇しました。
アルバムは、ゴールド認定されています。

先ず、簡単にFrank Oceanを紹介しときます。
ルイジアナ州ニューオーリンズ出身です。

1987年10月28日生まれ、本名は、Christopher Breauxです。
彼自身は敬虔なクリスチャンです。
2010年に、タイラー・ザ・クリエイター率いるアーティスト集団OFWGKTAに加入し注目を集めます。

2011年には、ミックステープ『Nostalgia, Ultra』をリリースし、その退廃的な独特の世界観を持った楽は、各方面から非常に高い評価を受け絶賛されています。

2012年には、公式デビューアルバムChannel Orangeがリリースされ、初週に13万枚近くを売り上げ、Billboard 200にて初登場2位を記録しています。

2012年7月4日に自身がゲイであることを告白して衝撃が走りましたね。
2013年にはグラミー賞にて、ベスト・アーバン・コンテンポラリー・アルバムとベスト・ラップ・サング・コラボレーションを受賞したのも記憶に新しいところですね。
それでは、アルバムを紹介していきましょう。
 
1.Start
先ず、46秒のイントロで幕開けです。良く聴いてみると初代プレステの起動音が使われています。
やはりゲーム世代のやる事が面白いと思わず納得してしまいました。

2.Thinkin Bout You
この楽曲は完全に新しいR&Bですね。軽めのビーツ。フックのファルセット、DUBの影響と要素が注入された最高に気持ち良い楽曲ですね。
どちらかと言うと常に時代の先端にあるインディーロックを好きな人がこのんで聴きそうな感じだけど・・・僕は、ふわふわした音楽が非常に好きなのでタマラナイです。意識の中に自然と入り込んでくる音と声、自分の精神とリンクして呼吸をするだけで心地よくなれます。

3.Fertilizer
イントロダクションです。

4.Sierra Leone
展開が凄いですね。最初はシンプルなんですけど、どんどん音が入ってきます。
アコギ→キーボード→ヴォーカルアレンジ→リヴァース音→ストリングス
ほんと色々な音が次から次に出てきます。特にストリングスが印象的ですね。
ヴォーカルパートも独創的で結構色々なことやってます。
色々な事をやってる割りには2分30秒で終わるので驚きですね。
と言うよりいたずらに終わらせてる感が強いですが、そこがアーティスティックで僕は大好きです。

5.Sweet Life
彼の作品は起承転結が素晴らしいですね。この楽曲も最初は押さえておりますが、どんどん盛り上がります。
フックは完全にSOULですね。Musiq Soulchildが歌ってもおかしくないくらい。
微妙なレイドバック加減が心地よくてたまりませんね。
ここら辺が彼の凄い所で、ジャンルを超越した素晴らしさを体験できる1曲ですよ。

6.Not Just Money
こちらもインタールードです。

7.Super Rich Kids Feat.Earl Sweatshirt
こちらも独創的な1曲ですね。冒頭から聴こえるリズムに気を取られますが、
メロディーやウワものはいたって普通ですね。
そこらへんのコントラストが良いんでしょうね。
初夏の朝に聴きたくなるような楽曲ですね。うっすら聞こえるホーンセクションが良いですね。
メロディーも緩やかで、フックのReal LoveはMary J. Bligeの名曲のReal Loveを引用していますね。

8.Pilot Jones
この楽曲は、リヴァース系のシンセが特徴的な1曲ですね。
優しい彼の歌声とファルセット、かなり静かな印象の楽曲ですが奥の深い感じがしますね。

9.Crack Rock
この楽曲は究極ですね。ヴィンテージなオルガンにピアノの組み合わせが天才的です。
オルガンの空間とピアノの空間が違うのでそこがまたいいですね。
バンドでやったらより味が出てカッコ良さそうですが、最後は突然終了します。

10.Pyramids
9曲目に続くようにして始まります。このアルバムの特徴としてリヴァース系の音色が使われております。使われる回数は多くないですが、普段聴いてるアルバムにはほぼ皆無なので印象的です。
それにしてもこの曲はサイケデリックですね。
色々な展開が凄いですね。2曲が1曲になったような感じですが、
そこがまた彼の手腕で上手い事聴き手を飽きさせないようにしてるって感じです。

11.Lost
後半はどことなくロックぽいアプローチが多そうな予感のする楽曲ですね。
その中でも色々なサウンドがあって楽しいです。 踊りたくなるようなリズムが良いですね。

12.White Feat.John Mayer
この楽曲は、約1分の短い楽曲ですが、最高です。
ギターにはJohn Mayerが参加しています。
キーボードとギター、大人の楽曲です。

13.Monks
こちらもファンキーな楽曲ですね。またまた文句なしに最高の一言に尽きますね。
ベース、ドラムがアルバムの中では一番アグレッシブに躍動する1曲です。
Ryan Leslieを感じさせる所もいいですね。

14.Bad Religion
オルガン・ピアノで始まりストリングスが入ってきて、ロック的アプローチが多くて聴いていて楽しいです。どことなくLenny Kravitzも後ろに見えるような気がしますね。

15.Pink Matter Feat. Andre 3000
Andre 3000(アンドレ・3000)が参加した楽曲です。どうやらギターも弾いてるみたいです。
印象的なヘタウマなリフが良いですね。 もっとパンチが効いてるのかと思いきや・・・
物凄くゆったりとした楽曲です。Andre 3000もいい味出してますね。

16.Forrest Gump
やはり終盤はロックテイストで攻めてきましたね。トラックもシンプルで聴きやすいです。

17.End / Golden Girl Feat. Tyler, The Creator
この楽曲で終了。3分44秒からGolden Girlがスタート。
この曲もいいんですよね。やはり彼はメロディーを書く天才ですね。良いメロディーラインを書きますね。Tyler, The Creator強烈に参加して最後に華を添えていますね。

彼は唯一無二と言うよりも色々なサウンドを上手く吸収して自分の物にしている、
更にはジャンルにとらわれない大きな器が一番の魅力。

サウンドも今時使用されているものではなく、
己が表現しようとしている事を上手く描けるような音色を使っているのが印象的ですね。

各紙で物凄い高い評価を受けるのも納得。音楽好きが好きそうなアルバムですね。
このアルバムを作ったのがR&B系のアーティストってのも一つの魅力である事に間違いはないですね。ともかく今年の最大に高評価のアルバムになるであろう作品。
皆様もチェックしてみてくださいね。

2013年4月1日月曜日

Edward Gein

今回からスタートしました。Serial Killerの紹介コーナーです。
第1回目の今回は、Edward Geinです。


大傑作ホラー映画で有名な悪魔のいけにえの殺人狂のモデルになった、Serial Killerです。
アメリカの中北部、ウィスコンシン州の中央に位置する広大な平原の真ん中に、プレインフィールドという人口600人の小さな町があります。「何もない平原」というその名の通り、
本当になんにもないところであります。
視界に映るのはどこまでも続くライ麦畑のみ。住民の娯楽は鹿狩りと、
1杯のビールぐらいしかなかった町で、全米が震えあがる事件が起きます。


1954年12月8日、この町で酒場を営むメアリー・ホーガンという体格のいい中年女性が行方不明になった。シーモア・レスターという農夫が一杯やろうと店に入ると、中には誰もいなかった。

カウンターの中を覗いて仰天した。床が血だまりになっていたのである。
通報を受けたハロルド・シンプソン保安官は、床に転がる32口径ライフルの薬莢と、
引きずられた血の痕を発見した。誰かがホーガンを射殺し、その遺体を持ち去ったらしい。

しかし、何のために? 現場には争った形跡はないし、レジも手つかずのままだ。
動機がまったく掴めなかったらしいです。事件から1ケ月が経過しても事態は進展しなかったんですよ。

3年後の1957年11月16日、今度は金物屋を営むバーニス・ウォーデンが行方不明になった。
先のメアリー・ホーガンと同じような背格好のおばさんで、
26年前に夫に先立たれてからは店を1人で切り盛りしていた。

その日は鹿狩りの解禁日で、男たちはみな森に出掛けていた。町は閑散としていたが、
ウォーデン夫人だけは店を開き、1人で店番をしていた。
息子のフランクが帰って来たのは日が暮れた頃だ。
店は明かりが灯っているにも拘わらず鍵がかかっている。

不審に思って合鍵で中に入ると、まずレジがなくなっていることに気づいた。
そして、床が血だまりになっている。フランクは慌てて保安官に通報した。

新任の保安官アート・シュレーが駆けつけた時には、フランクは下手人の見当をつけていた。
男たちがみな鹿狩りに出掛けた午前8時30分頃、エド・ゲインがウォーデンの店に現れた。

ウォーデン夫人は顔をしかめた。最近、この男から頻繁に色目を使われ、
デートに誘われていたのである。

しかし、客は客だと自分に云い聞かせ、いつものように愛想よく応対した。
ゲインは不凍液を注文して代金を支払い、隅の棚から22口径のライフルを手に取り、
品定めをするふりをしながら弾を込めると、夫人の頭に狙いを定めて引き金を引いた。
即死だった。次にゲインを目撃したのはエルモ・ウエックである。

彼はゲインの所有地で鹿を仕留めたところで、彼が運転するフォードのセダンにはち合わせた。
ゲインは愛想よく手を振り、そのまま走り去っていった。

午後になって、近所に住むボブ・ヒルと妹のダーリーンが「車のバッテリーが切れたので、
町まで車に乗せてくれないか」とゲインに頼みに来た。

奥から現れたゲインの両手は血まみれだった。
シカをさばいていたと、ゲインはそう云ってニヤニヤと笑ったが、兄妹は不審に思った。
彼は常日頃から「けものをさばくのはきらいだよと云っていたからだ。

だからこそ彼は鹿狩りに出掛けないのである。しかし、まあ当人がそう云うんだからそうなのだろうと、血を拭ったゲインに町まで送ってもらった。そして、御礼としてゲインを夕食に招いた。
ゲインがヒル家の夕食に舌鼓を打っていた頃、シュレー保安官はフランクと共にゲインの家へと向った。家の中は真っ暗で誰もいない。2人は裏手に建て増しされた台所に踏み込んで、
懐中電灯をかざした。天井から何かがぶら下がっていた。

Yの字型のそれは、逆さ吊りされた人間だった。
陰部から胸部に至るまでが縦一文字に切り裂かれて、
はらわたをすべて抜かれている。首も切断されていた。

フランクは、その異形の物体が変わり果てた母の姿であることを悟るや泣き叫んだ。
新任の保安官は外に飛び出し、雪上に胃の内容物をぶちまけた。

ゲインの家を捜索した警察は、恐怖を通り越して、笑うほかなかった。ベテランの捜査官でも、
ここまで凄まじい光景は未だかつて見たことがなかった。

まず、その不潔さに驚かされた。部屋の中には汚れたままの食器や腐りかけた残飯、空き缶や空き瓶、その他さまざまな汚物が所狭しと散らばっていた。
食器類の中には不思議な形のものがあった。

よくよく見れば、それは人間の頭蓋骨の上半分を切り取って加工したものだった。
棚を見上げればズラリと頭蓋骨が並んでいる。ベッドの柱も頭蓋骨で飾られていた。

椅子の肌触りも変だった。思った通り、人間の皮だった。この他にもランプシェードやゴミ箱、太鼓、
ハンティングナイフの鞘が人間の皮で出来ていた。ベルトは女性の乳首で飾られ、
ブラインドの紐にも唇がついていた。人喰い人種が作るという「干し首」も9つ見つかった。

どれも髪の毛は生前のままである、中には化粧を施されているものもある。
その1つが3年前に失踪したメアリー・ホーガンのものだった。

バーニス・ウォーデンの切断された頭部も発見された。両耳には紐が通されており、
壁飾りとして吊せるように加工されていた。
彼女の新鮮な心臓はオーブンの上の鍋の中で調理されるのを待っていた。

古ぼけた靴箱の中には9つの女性器コレクションがあった。ほとんどが乾いて縮んでいたが、
1つだけは銀色に塗られ、紅いリボンで飾られていた。もう1つはとれとれの新鮮なやつで、
保存用に塩がまぶされていた。鼻だけが詰まった箱もあった。

人肌マスクも9つも見つかった。それは丁寧に人体から剥がされたものだった。
極め付きは人肌チョッキである。おっぱいがちゃんとついており、着ると女性に変身できるという優れものだ。ゲインはおそらく、これを着て、マスクをつけて、女になったつもりで自慰に耽っていたのではないだろうか? いずれにしても、人間の所業とは思えない。悪魔の仕業である。
一方で、整然とした部屋もあった。

それはゲインの母親の部屋であった。10年前に死んだ時からそのままの状態で保存され、誰も入れないように封印されていたのである。
ゲインが殺害した女性は二人とも母親に似たところがあった。

太っていて威圧的な中年女性。ゲインは何度も何度も繰り替えして母親を殺していたのではないか。彼は母親も、母親の思い出も心から愛していなかったに違いない。

母の部屋を生前のままに保存して封印していたのは、愛情だけではなく畏怖の念も感じられる。
とにかく、母親の呪縛から逃れることが出来なかったことがゲインの最大の悲劇だと思いますね。
彼は母親を「剥製」にはしていない。それはあくまでも噂である。

加えてネクロフィリアとカニバニズムの噂も当人は否定しているが、これについては本当のところは判らない。ゲインは医師団に「回復の見込みのないほどに精神を病んでいる」として責任無能力者と診断され、州立の精神病院に収監された。
この措置に身内の墓を暴かれたプレインフィールドの住民たちは猛反対た。
やがて、ゲインの土地は競売にかけられ、売上げがゲインのものになると知るや、
ゲインの家を焼き払った。プレインフィールド唯一の観光名所は消え失せた。

現在でも人口800人程度のこの町では、いまだにゲインの話題はタブーだという。
焼却を免れたゲインのフォード車は競り落とされて見世物になった。

運転席にはゲインの蝋人形、バックシートには切り刻まれた血みどろの女の死体が置かれていたというから悪趣味の極みだ。抗議の電話が殺到し、数日のうちに展示を禁止されたという。

1984年7月26日、ゲインはメンドータ精神病院で呼吸不全のために死亡した。77歳だった。
遺体はプレインフィールドの母の隣に埋葬され、町の唯一の観光スポットになっているらしいです。

エド・ゲインはおそらく映画史に最も影響を与えた人物だと思います。

彼がいなければ『サイコ』も『悪魔のいけにえ』も『羊たちの沈黙』も作られることはなかったのでは無いでしょうか。
彼は現代アメリカの悪夢を象徴する存在であり、その無垢だが邪悪な魂は今日も生き続けています。